僕も猫を飼っていますが、猫の行動には人間がわからない部分がたくさんあります。だからこそ、観察をすることが非常に大事で、観察をしているとなんとなく見えてくることもあります。例えば子猫と先住猫がいます。子猫の寝床に先住猫が寝た。その後に先住猫の寝床に子猫がおしっこをした(普段はちゃんとトイレでできるのに)。これは、もしかしたら子猫が自分の場所を取られたという意思表示をしたのかもしれない。そこで怒ったって意味がない。もし意思表示としてしていたのだとしたら、「自分の場所を取られた」という気持ちに「怒られた」ということまで重なって、二重の苦しみになってしまう。言葉は通じないけれど、観察をすればなんとなく見えてくることがある。
そして、いつもはちゃんとトイレでおしっこができる子猫が、できなくなってしまう時というのは、「できなくなった」わけじゃない。できるのに、何か理由があって“そこ”でしたということ。その気持ちを考えてあげることが大事だということ。人間だって、自分の大切なものを取られたと感じたら(実際に取られたわけじゃなくても)、嫌な気持ちになってしまう。だから、猫に対してもその感情を尊重することが大切だと思う。そうやって観察していった先に、子猫が他のところでおしっこをしなくなれば、きっとそれが正解なのかもしれない。
人間ができる猫同士の関係づくりで一番大事なことは「叱らない」ことと「理解」、そして「観察」です。
猫を「観察」するということ
観察は、問題行動を責めるためではなく、気持ちと理由を見つけるための道具です。
猫は言葉で説明できません。だから私たちが見る・聴く・感じることで、猫の「困った」「うれしい」「不安」を読み解きます。
なぜ観察が大事?
- 原因に合った解決ができる:叱るより、理由に合う環境調整の方が早く効きます。
- 猫の安心を守れる:安心が増えると、マーキングや粗相は自然と減ります。
- 関係づくりになる:見て、理解して、尊重すること自体が信頼になります。
観察とは何か?
- 瞬間を切り取ることではなく、前後の流れまで含めて見ること。
- 見た事実を評価や推測と分けてノートに記すこと(「怒っている」より「耳が横、しっぽが早く振れていた」)。
何を見ればいい?—4つのレンズ
- 場所(Where)
- どこで起きた?静か/騒がしい、逃げ道はある?高い場所は?においは強い?
- 時間(When)
- いつ起きた?ごはん前後、来客後、掃除機のあと、先住と接触した直後など。
- 相手・関係(Who)
- 近くに誰がいた?人・猫・音・物。先住との距離感、見つめ合い、追い越し動線。
- からだと気分(How)
- 耳・ひげ・しっぽ・姿勢・動きの速さ・鳴き方・食欲・トイレの量と回数。
ポイント:必ず**俯瞰して(全体像で)**見る。
その行動“単体”ではなく、**文脈(直前・直後・周りの条件)**をセットで記録する。
俯瞰して見るコツ(文脈のチェックリスト)
- 直前に何が起こった→行動→直後に何が起きたかを3コマで書く。
- 環境要因:音・匂い・温度・照明・人の動き・別の猫の位置。
- 資源の配置:トイレ、寝床、食器、水、爪とぎ、隠れ場所が余裕がある状態になっているか。
- 逃げ道:高低差と通路の幅。行き止まりが「圧」になっていないか。
観察の実践:ミニログの付け方(例)
- いつ:9/24 21:10
- どこ:リビングのソファ横
- 前後:先住が子猫のベッドで寝た→3分後、子猫が先住のベッドにおしっこ→すぐ片付け
- からだ:子猫の耳はやや横、しっぽ下がり、鳴かず
- 仮説(後で検証):においの上書き+安心基地の不足
- 次の一手:子猫エリアの確保/トイレ1台追加を寝床近くに一時設置
仮説は“鉛筆書き”。当たっていそうなら続け、違ったらすぐ消して別案へ。
観察から導く「やさしい介入」
- 環境を先に動かす:資源の分散、隠れ場所と高い場所の追加、動線の見直し。
- においの調整:酵素系で完全消臭→段階的なにおい交換。
- 短い成功体験:うまくいっている時間で切り上げる。褒めは小さく、安定を崩さない。
ありがちな落とし穴
- 行動だけを見て**“わがまま”と決めつける**。
- 1回の出来事で結論を出す(サンプル不足)。
- 匂いを残したままにして再発のきっかけを置いてしまう。
- 叱って文脈を悪化させる(不安が原因の行動は強まりやすい)。
「医療のサイン」も観察に含める
- 何度も行くのに少量・血尿・強く鳴く・急に触られるのを嫌がる・食欲変化など。
→ 早めに受診。環境調整と医療チェックは両輪です。
最後に
観察は「見張る」ことではなく、安心のレンズで世界を一緒に見ること。
単体の行動ではなく俯瞰・文脈・記録でゆっくり読み解けば、猫は「わかってもらえた」という安心を覚え、行動は自然と落ち着いていきます。
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