「癒しをもたらすのは“理”の通った理解である」―感情では癒せない心の深層へ

癒しとは、真実の筋道に出会うことである。
嘘や歪曲では、心の苦しみは本当には解けない。

癒されぬ心には、まだ通っていない理（ことわり）がある。
それは、たんに共感されることではなく、筋の通った理解を求めている。

共感だけでは癒せない。
いまこそ、“理解”という言葉の本質を、もう一度問い直す必要がある。

菅原隆志

僕は長年、理解＝癒しだとお伝えしています。これは一般的な意味での癒しのことではありません。今回はそのことについて記事を作成しました。

■ 感情の共感だけでは、心の奥には届かない

現代社会では、「共感」や「寄り添い」が癒しのキーワードとして広く語られるようになりました。もちろんそれらは大切な要素です。苦しみに満ちた心に、「あなたの痛みはわかるよ」と静かに言ってくれる人がいるだけで救われる瞬間はあります。

しかし、心の深層――とくに、長年癒されなかった痛みや、繰り返し立ち戻ってしまう苦悩の根には、共感だけでは届かないことがあるのです。

なぜなら、そこには「物語としての筋道」が崩れているからです。

菅原隆志

僕は自分自身の心の深層に自力で到達した経験があるので、だからこそ理解こそが深い癒しに繋がると理解しています。

■ 理の通らない過去は、癒されない

人は、どんなに苦しい体験でも、「なぜそうなったのか」「その出来事はどういう意味だったのか」という因果の筋道が見えたとき、初めて納得し、心の底から安堵できます。

ところが、人生の中にはそう簡単に筋道が見えない出来事があります。
また、以下のような状況では特に「理解の困難」が生じます：

• 自分や他者が事実を否定したり、歪めて語っていたとき
• 当時の自分が本心を言葉にできなかったとき
• 周囲の人々が見て見ぬふりをしたとき
• 感情的な反応が優先され、理が通らぬまま物事が進んだとき

このような場合、心の奥には「まだ通っていない理（ことわり）」が残ります。
そしてそれは、時間が経っても消えることなく、無言のまま苦しみとして留まり続けるのです。

菅原隆志

僕の場合で言うと、なぜ僕が育った家庭は狂ってしまったのか。そしてその中で僕は家族の嘘で悪者扱いされたのか。これが死ぬほど苦しかった部分です。とても悲しかったです。それを深く理解し、紐解き、なぜそうなったか、どういう意味だったか、解き明かしました。簡単に言えば、僕が育った家族は僕以外、カルトの毒に負けたのです。それを含め、全体を理解しました。その結果、僕は癒されました。

■ 「理解」とは、筋道をたどり直す営みである

ここで言う“理解”とは、単なる知識の獲得でもなければ、感情的な同情でもありません。

それは、物事の因果・背景・構造・文脈を、丁寧にたどり直し、歪まずに見つめることです。
つまり「理（ことわり）を解く」こと。

癒しとは、出来事の背後にある“理”を明らかにし、筋の通った物語として再構成するプロセスなのです。
ここには、勇気と誠実さが要ります。
ときには自分の思い込みや、他者の嘘と向き合わなければならないからです。

菅原隆志

僕は事実と真実で過去を振り返り、前記した「物事の因果・背景・構造・文脈を、丁寧にたどり直し、歪まずに見つめること」をしました。答えが出て、深い納得が起こり、過去が終わりました。

■ 嘘と歪曲では、心の問題は“解けない”

人はときに、苦しみから自分を守るために、嘘をつきます。
「そんなに辛くなかった」「自分にも非があった」などと、出来事を軽く見積もったり、意味をすり替えたりします。

周囲もまた、真実に触れることを避けるために、わざと曖昧にしたり、話題を逸らしたりします。
そうした歪曲が重なると、本来あるはずの道筋が見えなくなります。

心が癒されるには、その“からまった糸”をほどき、本当の流れ＝真実の筋道を回復することがどうしても必要なのです。

菅原隆志

僕も昔はずっと嘘をついていました。悲しくない。痛くない。怖くない。辛くない。苦しくない。こんな嘘ばかりついて自分を裏切っていました。そこも正しました。

■ 「理の通った理解」は、解放をもたらす

たとえ苦しい出来事であっても、それが自分の人生のどこに位置づけられるかがわかり、
誰のどんな影響があったのかを因果として把握し、
なぜ自分がそう反応したのかを整理できたとき――

心はようやく、「わかった」と静かにうなずくのです。

この“納得”は、他者からの同情では得られません。
必要なのは、理にかなった理解、つまり自分の人生を、自分自身の言葉と理で組み直すことです。

■ 理の理解は、最も深い癒しを生む

「感情的な癒し」は一時の慰めであっても、
「理に基づいた癒し」は、生きる構造そのものを変えていきます。

それは、もはや慰めや励ましではなく、
人生の真実を取り戻す行為です。

そしてそこにこそ、本当に静かな、持続的な癒しがある。

■ 終わりに ― 「理解とは、理を解くことである」

私たちはつい、「わかってもらえれば癒される」と思いがちです。
しかし本当は、「筋道が見えたときに、人は初めて本当に癒される」のです。

だからこそ、いま問い直すべきなのは、
共感や優しさの“前提”としての理解とは何か？
ということ。

そして、その理解が理を伴うものであるかどうか。

癒されない心には、まだ通っていない理がある。
それは私たちが避けてきた、けれど本当に向き合わねばならない“問い”なのです。

菅原隆志

だから僕は深い自己認識と自己理解をおすすめしています。その方法としてサヨナラ・モンスターを公開しています。

関連書籍：理解が癒しになるとき: 幽霊とトラウマ──書くことで過去を終わらせる方法 Kindle版

私は子ども時代、何度も「心霊体験」をしていました。
音もなく動くドアノブ、階段をゆっくり上がってくる足音、誰もいないはずの部屋の気配。
けれど、大人になり、心の傷を深く見つめなおし、癒していくにつれて――それらは一切、起こらなくなりました。

いったい、あの現象は何だったのか？
なぜ「癒し」が、“見えないもの”の正体を解き明かしていったのか？
それが、この本に書いたすべてです。

本書は、虐待、心の傷、カルト的な支配構造、解離、心霊現象……そうした「理解できなかった過去」に、自ら言葉を与え、構造を与え、終わらせてきた一人の人間の物語です。
そしてそれは、「書くこと」によって自己理解を深め、人生を取り戻していった記録でもあります。

理解こそが癒しになる。
あなたがどれほど深い傷を抱えていても、自己理解は、静かに確かにあなたを救います。

“わからない”を終わらせるために――
この本が、あなた自身の回復の道を歩むための、小さな手がかりになることを願って。